スマホ・タブレットの充電速度
USBの規格を整理しておこう②
~充電速度に関して~
USBの充電規格って多すぎてややこしい…いざ調べても細かい説明で埋め尽くされた解説ページばかりで、知りたい部分を見つける前に離脱してしまう…
そんな皆様の為になるべくややこしくならないような解説を試みました!!
目次
まず最初に
USBはそもそもが充電を目的として存在していたわけではないため、高速充電をまかなうためには電力が足りませんでした。
デフォルトパワー
規格 | 電圧(最大) | 電流(最大) | 電力(最大) |
---|---|---|---|
USB 1.0 | 5V | 0.5A | 2.5W |
USB 1.1 | |||
USB 2.0 | |||
USB 3.0 (USB 3.1 Gen 1) (USB 3.2 Gen 1) |
0.9A | 4.5W | |
USB 3.1 Gen 2 (USB 3.2 Gen 2) |
1A | 5W | |
USB 3.2 Gen 2×2 | |||
USB4 (Version 1.0) | |||
USB4 Version 2.0 | 詳細は2022年11月に発表予定 |
USBの標準電力ではUSB4(ver1)でも最大電力は5W…これでは電力が足りず充電速度を上げる事ができません。
ということで充電速度を上げるための拡張規格が策定されたわけです。
USB充電規格
USB充電の速度を上げる規格は下記の4つの種類に分類されます。
①従来規格
②USB Power Delivery(USB PD)
③Quick Charge(QC)
④メーカー独自規格
これらの規格名を知っていても違いまではご存知ないのでは?
USB関連は用語が乱立していてややこしいですからね…
①従来規格
USB 2.0では500mAだった給電能力がUSB 3.Xで900mAに引き上げられます。その後デフォルトパワーを拡張したUSB BCとType-C Currrentが策定されました。
▼USB BC 1.2
BCはBattery Chargingの略で、2010年にUSB-IF(USB Implementers Forum)が策定した急速充電の規格。
当時はデバイス側が充電器側の給電能力を知る事が出来ず、上記のようにUSB 2.0では500mA、USB 3.Xで900mAまでしか流すことが出来ませんでした。
そんな状況の中で規定以上の電流を流す充電器等がが市場に出回り始めたため、安全面も考慮し急速充電の規格統一を行ったという面があります。
USB BCでは給電側のUSBポート(Charging Port/CP)をSDP(Standard Downstream Port)、CDP(Charging Downstream Port)、DCP(Dedicated Charging Port)の3つに定義し、充電され
るデバイス側(Portable Device/PD)がそれを判別することにより、急速充電が可能となります。
SDP | デフォルトUSBポート | 2.5W(5V/0.5A) |
4.5W(5V/0.9A) | ||
DCP | 充電専用USBポート | 4.5W(5V/0.9A) |
CDP | 急速充電+通信USBポート | 7.5W(5V/1.5A) |
SDPはデフォルトUSB 2.0/3.Xポート、DCPはコンセントに差す充電機器、CDPはPCの急速充電可能なUSBポートを思い浮かべて頂ければ分かりやすいと思います。
▼Type-C Current
給電側・充電側双方がUSB Type-Cの場合に利用できる標準規格、Type-C Current@1.5A(5V)、USB 3.1からはType-C Current@3.0A(5V)に対応。
ただしUSB Type-C以外の端子に繋ぐ際に変換アダプターを使用すると0.9Aとなります。
②USB Power Delivery(USB PD)
USB-IFが策定したUSB Type-Cに対応した急速充電の規格。
SB BC1.2で7.5W、Type-C Current@3.0Aで15Wだった電力が大幅UPしたため、スマホ等のモバイル機器の充電速度がさらに向上し、ノートパソコンやタブレット等の大型機器への充電も可能にりました。
▼USB PD3.0
2015年発表の現在主流のリビジョンで最大100W(20V/5A)の電力供給ができます。
規格 | 供給方向 | 電圧 | 電流 | 電力 | |
---|---|---|---|---|---|
USB 2.0 | デフォルト | ソース⇒シンク | 5V | 0.5A | 2.5W |
USB 3.0 | ソース⇒シンク | 5V | 0.9A | 4.5W | |
USB BC 1.2 | ソース⇒シンク | 5V | 1.5A | 7.5W | |
Type-C Current@1.5A | ソース⇒シンク | 5V | 1.5A | 7.5W | |
Type-C Current@3.0A | ソース⇒シンク | 5V | 3.0A | 15W | |
USB PD | ソース⇔シンク | 可変(5V/9V/15V/20V) | 最大5A | 100W |
※USB PD用語として電力供給側をソース、充電側をシンクと呼びます。
▼パワールール(Power Rules)
USB PDに給電する側にソースパワールール(Source Power Rules)、充電される側にシンクパワールール(Sink Power Rules)の2つのパワールールが授けられています。
ソースパワールールでは電圧と電流が規定(※上の表参照)されていますが、全てのシンクが全ての電圧に対応しているワケではなく、ソースの出力できるワット数(PD Power Rating)によって決まります。
またソースルールでは5V/9V/15V/20V以外にも12Vなどの電圧に対応する事を認めています。
ちなみに最大60W対応の充電器(ソース)を使う場合は3A対応USB Type-Cケーブル、最大100W対応の場合は5A対応USB Type-Cケーブルが必要とるので、『充電速度が遅いな?』と感じたらケーブルの見直しをしてみた方がいいかもしれませんね。
▼PPS
PPS(Programmable Power Supply)とはUSB PD 3.0のオプション規格。
これまでは送電側が受電側に過剰に電気を送ってしまうという欠点がありましたが(充電中のスマホの発熱の原因)、送電側が電気量を最適化することによって改善されました。
▼USB PD 3.1
2021年5月に発表されたリビジョンで出力が240W(48V/5A)に引き上げられました。
③Quick Charge(以下QC)
USB-IFではなくQualcomm社が開発したスマホ・タブレットの高速充電規格。Qualcomm開発の規格なのでSnapdragon搭載機の規格となります。
▼Quick Chargeのバージョン
バージョン | リリース | 対応機種 | 電圧 | 最大電流 | 最大出力 | |
---|---|---|---|---|---|---|
QC 1.0 | 2013年 (※) | Snapdragon S4世代~ | 5V | 2A | 10W | |
QC 2.0 | 2015年 | Snapdragon 800世代~ | 5V / 9V / 12V | 3A / 2A / 1.67A | 18W | |
QC 3.0 | 2016年 | Snapdragon 820世代~ | 3.6V~20V (200 mV刻み) | 2.6A / 4.6A | 36W | |
QC 4.0 | 2017年 | Snapdragon 835世代~ | QC動作時 | 3.6~20 V (200 mV刻み) | 2.6A / 4.6A | 36W |
USB PD動作時 | 5V/9V | 3A | 27W | |||
QC 4+ | Snapdragon 845世代~ | USB PD動作時 | 5V/9V | 3A | 27W | |
USB‐PD 3.0 PPS | 3~21V (20mV刻み) |
3A (50mA刻み) |
45W | |||
QC 5 | 2020年 | Snapdragon 865世代~ | 3.7A~21.5V | 5A (50mA刻み) |
100W以上 |
※2013年2月に2012年発売のSnapdragon搭載機種にQuick Charge 1.0が搭載されていると発表
▼QC4.0/4+
QC4.0から電圧が200mV刻みでUSB PDと互換を持つようになりました。表ではリリース年と対応機種以外全く同じ仕様に見えますが、このUSB PDとの互換性においてQC4.0とQC4+に大きな違いが生じます。
それはQC4.0はUSB PDとの互換はあるが下位QCとの互換性がなく、QC4+はUSB PDとの互換もあり下位QCとの下位互換を持っているという点です。
充電器機がQC4.0で…
スマホがQC3.0の場合⇒USB BCで充電
スマホがQC2.0の場合⇒USB BCで充電
充電器機がQC4+で…
スマホがQC3.0の場合⇒QC3.0で充電
スマホがQC2.0の場合⇒QC2.0で充電
ただしQC4+はUSB-IFが規定しているUSB PDのパワールールに則っていない為、正式に「USBPD対応」を謳う事ができません。
▼QC5
5世代目のQCで最大100W以上の高速充電をサポートし、従来よりも10℃ほど低い温度で充電することができます。
下位QCとも後方互換を持ちUSB PD規格にも“最適化”されています。
▼ドコモ急速充電
ドコモの最近の端末は仕様にUSB PDと明記していますが、一昔前まで明記されていたドコモ急速充電はQCのことで、急速充電2はQC2.0、急速充電3はQC3.0となります。
④メーカー独自規格
メーカー側が独自の規格をスマホ・タブレットに搭載している場合があります。この場合は市販の汎用ケーブルと充電器では仕様にある充電速度を出す事ができないので注意が必要です。
▼Apple
LightningケーブルになったiPhone5以降は5W(5V / 1A)・10W(5V / 2.1A)・12W(5V / 2.4A) の独自充電規格(3種類全対応はiPhone6以降)になり、iPhone8以降はUSB PDにも対応。
▼Samsung
GalaxyシリーズにはAdaptive Fast Charging(AFC)、Super Fast Charging(SFC)という独自の急速充電規格を搭載しているものがあります。
前者はGalaxy S6シリーズに初搭載された規格で15W / 25Wの出力、後者は25W出力のSuper Fast Chargingと現行で45W出力のSuper Fast Charging2.0となります。
SFCはUSB PD PPSに対応しているため規格を満たしていれば汎用の充電器・USBケーブルでも急速充電が
可能となります。
▼Xiaomi・OPPO等の中華系
中華メーカーは中国国内での性能競争が激しく、充電速度も独自の規格で競い合っているため、フラグシップ機には独自の超高速充電規格を搭載しています。
https://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/2202/28/news200.html
まとめ
急速充電の規格に対応しているのに充電に時間が掛かるな…と思ったら以下をチェック!!
①端末の対応規格
②充電器の対応規格と出力
③USBケーブルの対応規格
せっかく端末が急速充電の規格に対応しているのに、適当な充電器とUSBケーブルを使っているという方けっこうおられますよね(笑)
もしご覧の方で心当たりがあれば、見直してみる事をおすすめします。
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