ワイヤレスイヤホンとスマホの相性
初代AirPods発売後急速に拡大しているワイヤレスイヤホン市場──
現在はSONYにBEATS・BOSEやJabraといったイヤホンの老舗から、Samsung・Huawei・Xiaomiといったスマホ世界シェア上位メーカーまでワイヤレスイヤホン群雄割拠の時代。
そんな中、2019年の全世界ワイヤレスイヤホン市場に於いてAirPodsはなんと50%近いシェアを獲得しました。
で・す・が!!
『違うブランドも気になるけど性能とか何がどう違うか分からないから、取り合えずApple製のAirPodsを買っておけば間違いないかな』
『違うブランドも気になるけど性能とか何がどう違うか分からないかし、取り合えずiPhone使ってるからAirPods買っておけば間違いないでしょう』
正直その50%中の半分くらいの方々はこういう感じで「とりあえずAirPods」をしていませんか?
ということで、せっかく色々な種類のワイヤレスイヤホンがあるので、皆様がお持ちのスマホに合ったワイヤレスイヤホンを選んで頂けるよう、スマホを販売する側から見たポイントをまとめていこうと思います。
目次
重要なのはこの2つ
まずは【Bluetoothのバージョン】そしてもう1つが【コーデックの対応】
スマホとワイヤレスイヤホンはBluetoothで接続するという事は皆様ご存知だと思いますが、バージョンの違いによって性能がどのように変わってくるのかまではあまりご存知ないのではないでしょうか?
そしてコーデックです。2000年代半ばパソコンで動画や音楽をエンコードすることが流行った時代を過ごした方ならばお馴染みのワードかもしれませんが、最近の若い方や女性はあまり馴染みのないワードだと思われます。
そしてスマホとワイヤレスイヤホンは双方共にこのBluetoothのバージョンとコーデックが対応していないと、フルで性能が出来ません。
Bluetoothのバージョン
Bluetoothは1999年に発表された1対1で機器と機器を接続する無線規格で、最初のバージョン1.0からバージョンアップを重ね、2020年12月現在ではバージョン5.2まで発表されています。
─1.0(1999年7月発表)
最初に発表されたバージョン 。
─1.0b(1999年12月発表)
1.0に修正を加えたバージョン。
─1.1(2001年3月発表)
1.0に修正を加えたバージョンで最も普及したバージョン。
─1.2(2003年11月発表)
無線LANとの干渉対策が施される。
─2.0(2004年11月発表)
通信速度が最大3Mbpsに切り替えられるEDR(Enhanced Data Rate)機能が搭載される。
─2.1(2007年7月発表)
NFC(Near Field Communication)に対応しペアリングが簡単になる。
─3.0(2009年4月発表)
最大通信速度24MbpsのHS(High Speed)機能が搭載される。
─4.0(2009年7月発表)
消費電力を抑えるLE(Low Energy)機能が追加される。
─4.1(2013年12月発表)
LEにモバイル端末向け電波(LTE)との干渉対策が施され、直接ネットへの接続が可能になる。
─4.2(2014年12月発表)
LEの速度が2.5倍に高速化。IPv6/6LoWPANでネットへの接続が可能になる。
─5.0(2016年12月発表)
LEに低速化/高速化機能と通信範囲拡大の機能が搭載される。通信の速度は4.xの2倍、範囲は4倍、容量は8倍になる。
─5.1(2019年1月発表)
ペアリング中のBluetooth機器の方向探知機能が搭載される。
※2020年1月にバージョン5.2が発表されました
そして現在スマホはBluetooth5.0以上、ワイヤレスイヤホンは4.0以上のものが主流となっています。
ちなみにですがBluetoothのバージョンで音質が変わる事はありません。
なぜならBluetoothはバージョン1.0からずっとA2DPというHi-Fiオーディオ規格のプロファイルで通信しており、最新の5.0になってもそれは変わっていないからです。
※バージョン間の互換性などBluetoothの詳細に関してはBluetoothのバージョンに関しての記事をご参照下さい
またワイヤレスイヤホンには完全ワイヤレスの【左右独立型】と左右のイヤホン部分が有線で繋がっている【左右一体型】があり、【左右独立型】はAirPosに代表されるように高額帯、【左右一体型】はヘッドセット等の低価格帯のものが多く、
左右独立型ワイヤレスイヤホン⇒基本的にはBluetooth4.0以上
左右一体型ワイヤレスイヤホン⇒と3.0以前のものなども混在
という感じになっています。
コーデック
動画や音楽はデータ化する際にそのままだと容量が大きすぎるので圧縮します。その圧縮方式のことをコーデックと呼び、ワイヤレスイヤホンの音質はこのコーデックにより左右されます。
音声圧縮コーデックの種類
・SBC(SubBand Codec)
A2DP対応のBlutetooth機器のほぼ全てで使われている標準的なコーデック。
1番下位のコーデックなので音質が悪いと思われがちですが、ものによっては悪くないものもあるので、イメージだけで判断しない方が良いかも?
ただし通信速度が低いため遅延が起こりやすいです。
圧縮方式は可聴領域外の高音をカットするロッシー方式で圧縮率は1/20となります。
・AAC(Advanced Audio Coding)
iPhoneでワイヤレスイヤホンを利用する場合は必須のコーデックで、AppleがiTunesで使い始め一気に広まりました。
SBCと比べ高音質・高速で音楽のストリーミングサービスで使われていたり、馴染み深いところだと地デジ・ワンセグで使われていたりもします。
圧縮方式は可聴領域外の高音をカットするロッシー方式で圧縮率は1/20となります。
AndroidのaptX同格で対になるコーデックと覚えておきましょう。
・aptX
CSR社が開発したコーデック。2015年にQualcomm社がCSR社を買収、現在も開発を続けている。
主にAndroid端末で使用されています。
SBC・ACCが用いるロッシー方式ではなく、低圧縮率(圧縮率1/4)のロスレス方式を用いているので音質がとても良く、圧縮率が低いとデータ容量が大きくなるのですが、転送速度が早いので約32msという低遅延を実現しています。
aptXはワイヤレスイヤホンが広く普及する切っ掛けになったコーデックとも言えます。
iPhoneのACCと同格で対になるコーデックと覚えておきましょう。
・aptX HD
ハイレゾに近いレベルの音質(最大48kHz/24bit)を実現した現状で最上位のコーデック。
ロッシー方式であるが「聴覚心理」は利用せずPCMを1/4に圧縮しており、データ容量は大きいのですがaptXの1.5倍の転送速度があるので、約130msという低遅延を実現しています。
・aptX LL(Low Latency)
aptXの低遅延版。対応しているスマホは現在発売されていない(多分…)がゲーム機にaptX LL対応トランスミッターを接続をすれば、ゲーム中の動作と音の遅延を40ms未満に押さえる事が出来ます。
ゲームや動画視聴に最適化されたaptXと覚えておきましょう。
・aptX Adaptive
2018年10月に発表されたaptXシリーズの最新版。
周囲の無線環境を判断し、状況に応じてビットレートを変動させることにより接続を安定させる。
ビットレートは280kbps(CD相当)~480kbps(ハイレゾ相当)で自動的に可変するので手動による操作はいらない。
またファイルのヘッダー情報からで音楽ファイルなのか動画ファイルなのかを判断し接続を安定させる事が出来ます。
Snapdragon865世代の一部の端末(ROG Phone3等)に搭載され始めている次世代のメインストリームコーデック。
・LDAC
SONYが開発したハイレゾ音源をBluetoothで転送する為のコーデック。
最大96kHz/24bitとaptX HDより高音質でよりハイレゾに近い音質を実現しているが、音質設定を最大(990kbps)にした場合1000ms(メーカー非公表)の遅延が生じるといわれています。
【コーデックの特長早見表】
コーデック | 信号 | ビットレート | ハイレゾ | 遅延 | 備考 |
SBC | 48kHZ/16bit | 328kbps | – | 220ms(±50ms) | 標準コーデック 遅延が発生しやすい |
ACC | 48kHZ/16bit | 非公表 | – | 非公表 | iPhoneメイン 高音質・低遅延 CD音質相当 |
aptX | 48kHZ/16bit | 384kbps | – | 70ms(±10ms) | Androidメイン 高音質・低遅延 CD音質相当 |
aptX HD | 48kHZ/24bit | 576kbps | ○ | 約130ms | Androidメイン ハイレゾ相当 |
aptX LL | 48kHZ/16bit | 352kbps | – | 40ms未満 | aptXの低遅延版 |
aptX adaptive | 96kHZ/24bit | 260〜640kbps | ○ | 80〜100ms | Androidメイン CD〜ハイレゾ相当 |
LDAC | 96kHZ/24bit | 990kbps 660kbps 330kbps | ○ | 非公表 | SONY製コーデック CD |
iPhoneに関しては必然的にACC対応のワイヤレスイヤホンという感じで分かりやすいですが、
Androidの場合でスマホとワイヤレスイヤホン双方が複数コーデックを持っている場合は、基本的に上位の組み合わせで接続されます。
例:
スマホ側のコーデック対応 SBC・ACC・aptX
ワイヤレスイヤホン側のコーデック対応 SBC・ACC・aptX・aptX HD
上記のような場合、最上位のコーデックはaptX HDだが、スマホ側が非対応の為、ひとつ下位のaptXで接続される
スマホのコーデックを調べる
iPhoneの場合は一貫してACC固定ですが、Androidの場合は多種多様な機種が発売されている上に、最新の機種であってもハイエンド・ミドルクラス・エントリーで性能差が出て来ます。
なので一概に【最新機種=最新コーデック搭載】といえません。
もちろんネット検索をすれば対応コーデックは出て来ますが、もっと簡単に調べる方法があります。
Android8.0以降の機種になりますが【設定】から【開発者オプション】に入り下の方にスクロールしていくと【Bluetoothオーディオコーデック】がありますので、そこをタップすれば対応コーデックを見る事が出来ます。
※画像はドコモXperia1 SO-03Lのものとなります。Xperia1はSony製なのでLDACにも対応しており、音質の手動選択も可能です。
【開発者オプション】が設定内に見当たらない場合は、【デバイス情報】内にある【ビルド番号】を7回タップすれば解放され、【システム】内の【詳細設定】を開けば表示されます。
スマホとワイヤレスイヤホン
ここまでBluetoothのバージョンとコーデックの説明をしてきました。
難しい内容もなかにはありましたが、この2つを押さえておけば買い間違いが起きる事はありません。
ということで、ワイヤレスイヤホンを買う前に先ずはお持ちのスマホの【Bluetoothのバージョン】次いで【コーデックの対応】をチェックです。
その2つを確認したらワイヤレスイヤホンの海に飛び込んでみましょう!!
今まで不安だった部分が消えて『あれいいな~』『これもいいな~』となってきますよ!!
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